還暦からの再起動

お料理レシピ、時々、遠距離介護や病気との付き合いなども。人生の下りを楽しむ還暦女子の日常です。

介護者の心が折れるとき

昨日、父と姉との間で、ちょっとした事件が勃発しました。

決して楽しい話題ではないので、介護に関心をお持ちでない方は、どうぞスルーしてくださいね。

 

大声で父から怒鳴られた姉

さて、昨晩、姉から電話がありました。

「もしもし・・・」第一声の声のトーンで、「あっ、何かあったな」と感じた私。

「どうかした?」と聞き返すと、

「いきなりお父さんに、『家なんか売るんじゃなかった!おまえのせいで、全財産、なくなっちゃっただろうがっ!』と大声で怒鳴られた」と姉。

事の仔細はこうです。

一昨日、母が入所予定の有料老人ホームに父親も一緒に入所する話しが持ちあがりました。

そこは、個室ゆえ、もしも父親が入所したら、荷物は最小限のものに限られる・・・そんなことを姉が父に話したそうです。

その時は、「それは仕方ないなぁ・・」という反応だったようです。

ところが、夜、独りになって考えて見ると、ここ半年で家を失い、そして有料老人ホームへの入所によって、最終的にはスーツケース1個程度の荷物になると考えた時に、急に心細くなったのだと思います。

半年前には、自宅を持ち、賃貸ながらそこそこの広さのある高齢者マンションに住んで、悠々自適の生活を送っていた自分が、どうしてこんなことに・・。

そう考えると、情けなさが怒りに変わり、「〇子が家を売れといったからこんなことになったんだ!」という図式になったと推測されます。

 

家を売却した経緯

自宅を売却した大きな要因は、転居して3年が経過する日の属する12月末までに売却すれば、税の優遇が受けられる「マイホーム特例制度」にありました。

今年の年末がその期限。いずれ売却するのならば、特例制度の恩恵が受けられるうちの方が節税になります。

母親が倒れ、医療費や介護費用がかかることが見込まれるため、このタイミングで売却するのが最良の方法だと父親と話し合いました。

「お父さんが稼いだものは、使えるかたち(現金)にして、お父さんとお母さんのために使って欲しい」

「年金が目減りしても、お金のことは心配しない生活を送って欲しい」

そう伝え、父親も、「それじゃ、売っぱらっちまうか!」と言って、当たり前のことですが、自ら書類にも署名捺印しました。

そして、不動産屋さんを見つけ、荷物の片付け、解体と、更地にするまでの膨大な作業をすべて担ってきたのは姉です。

そんな苦労があったというのに、父は、まるで姉にそそのかされて家を売らされたような言い方。

電話口で興奮し、叫ぶ父。ただ黙り込む姉。

「黙ってないで何か言えよ!!」と父。

「何も言いたくないです」と姉。

すると父親は、電話をブチンと切ってしまいました。

 

私たちはお母さんじゃない!

若いころから気に入らないことは人のせいにし、怒りが瞬間的に沸点に達して、抑制が効かない父親

起伏の激しい父親の感情はこれまで主に母親に向けられてきました。

私たち娘たちが父親の意に沿わない行動をすると、その怒りは母親に向き、母親は、「オマエの育て方が悪いからこうなったんだ!バカモン!」と怒鳴られてきました。

私たち家族のなかには、「父親の機嫌をそこねてはいけない」という不文律があり、「お父さんには言ってもムダ」「お父さんを怒らせないで」と目配せし合って表面上の家庭内の平和を保ってきました。

しかし、母親が倒れ、長期に入院。

怒りを向ける相手を失った父親の対象になるのは、姉と私しかいません。

ただ、姉も私も、母親ではありません。

父親を「よしよし」することもなだめることもできないし、また、しようとも思えません。

姉はここ半年余り、仕事のない日は、すべて両親に捧げてきました。

自宅の売却についても、どれほど大変だったことか。

その努力を台無しにするような発言に、「父親と言えども許せない」「育ててもらった恩は、十分に返した気がする」「親だから、年よりだからといってすべてを受け入れ、許さなければならないというのは納得がいかない」と話す姉。

私も、全くその通りだと思います。

 

介護者の心が折れるとき

介護は、いつ終わるかもわからない不確かな道のり。

そして、子育てと異なり、相手が若返って元気になることは期待できません。

ゴールの見えない下り坂を、ハラハラしながらひたすら下っているような営みです。

それでも、そして、どんなに身体的にキツくても、相手の笑顔や「ありがとう」の一言に、深い達成感を感じ、それをエネルギーにしてまた頑張っていけるのだと思います。

介護者にとっての一番の痛手は、介護している相手からの心ない言葉。(認知症によるものは除きます)

 

いつか自分にも

介護を必要とする日がやって来ます。

その時に、身体が不自由になり、多くのものを手放さなければならなくなった心細さの中にあっても、それでもなお、寄り添ってくれている人の心に温もりを与え続ける人でありたいと切に願っています。

 

 

目を通していただきありがとうございました。

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