ねたきりになって掴んだ幸せ
昨年12月に脳梗塞で倒れた母。
その後2月に回復期リハビリ病院に転院し、胃瘻をつけて、現在も入院中です。
摂食訓練を受け、調子の良いときで7割ほど食べられるようになりました。
身体機能の回復はほとんどみられずませんが、意識レベルはかなり改善。
まだまだ波はありますが、調子の良いときには、日常的な会話には支障がないほど。
そして、表情がとても柔らかくなりました。
お父さんと二人でいても寂しい
入院前の高齢者マンションでは、父と二人きり。
日に何度か、同じ住宅に住む友人やマンションのスタッフとの交流はありましたが、それもあいさつ程度。
父親は人付き合いが苦手なため、母親も友人を部屋に招いたり、自分が出かけるということもなく、ひっそりと二人だけの暮らしが続いていました。
電話口で、「お父さんと二人でいても寂しい」「つまらない」よくそんなことを訴えていた母親。
老いの孤独が、母親をブルーにさせていました。
若いスタッフに大事にされて
現在入院している回復期リハビリ病院のスタッフは、皆さん若く、病棟に活気があります。
理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護師の皆さんが、訓練やケアに取り組んでくださっています。
「〇子さん!」
母は、苗字ではなく下の名前で呼ばれ、訓練に取り組みつつ、時々、孫のようなスタッフに甘えてもいるようです。
閉ざされた父親との二人の生活から、自分を大事にしてくれる若いエネルギーが満ちた空間へ。
母親の肌艶が良くなった秘訣は、こんなところにもあるのではないかと思うほどです。
父親から受けるストレスから解放された母
父親は、若いころから大の癇癪持ちで、晩年になってもなお、何か気に入らないことがあると辺りかまわず怒鳴りつける人です。
いつも、ビクビクしていた母。
入院してから、その父に怒鳴られることもなくなりました。
逆に父は、ずいぶんと母親に当たり散らしてきた贖罪からか、ほぼ毎日のように面会に行っては、「母さん、頑張ってくれよ」と母親の手を握ってそばを離れません。
父親の言葉の暴力から解放された母親。
60年の忍耐の末に掴んだ安らぎのなかにいるような気がします。
ずっと父親の陰に隠れるように生きて来た母。
それが、寝たきりになった今は、自分が主役です。
自分のために力を尽くしてくれるスタッフがいて、夫も娘も妹も面会に来てくれる。
寂しく心満たされなかった日々があったことを思うと、私も姉も、
「今、お母さん幸せだね」とつくづく。
病気になったこと、寝たきりになったことは残念だけど、それでもなお、人は幸せになれるのだと母に教えられています。
目を通していただきありがとうございました。
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