「東京の人はね、だんだん劣化していってますよ」タクシー運転手さんの嘆き
昨日までの4日間、東京で過ごしていました。
何度か乗ったタクシー。
運転手さんは、どの方も6~70歳代。
ここでも、高齢化を感じました。
さて、そのうちのお一人の方と、しばらく話しが弾みました。
「最近、景気が上向いているっていう話しですけど、どうですか?運転手さんが、一番、肌でお感じになると思いますけど」
そんな問いかけに、運転手さんは、
「いや~、全然ですよ。景気が上向きなんて、どこの話し?っていう感じですよ」と。
運転手さん曰く、平成7、8年くらいまでは、サラリーマンの残業代は月20万ほどあり、皆さん、それを飲み代にしていたとのこと。
もう、以前の共通タクシーチケットも姿は消し、
「かろうじて、テレビ局だけですよ。チケット使っているのは」と。
そういう運転手さんも、東京の下町で金型を造る製造業の営業職として33年勤めたものの倒産。
「淋しいですよねぇ。製造業がダメになっちゃうのは。日本の誇りだったのにね」そう運転手さんは呟きました。
「もう、人口もどんどん減っていくし、あと100年も経てば、明治時代の人口に逆戻りだっていうから、えらい時代になったものですよ。」
「ほんと、子どもが少なくなりましたねぇ」と私。
「人口が減ってるけど、中身も劣化しちゃってねぇ・・」
そう、溜息をつきながら話したのは、ある若い女性のお話し。
偶然、車に乗った若い女性との会話のなかで、
「まぁ、それが常識っていうものでしょうねぇ」と話したら、
「運転手さん、『常識ってどういう意味?』」と真剣に問われたとのこと。
「いや~、驚きましたねぇ。自分の常識が相手には通じないっていうならわかるけど、『常識』っていう言葉自体が通じない、そんな世の中になりつつあるんだなぁって」
そして、その運転手さんによれば、男性は、概ね、視野が狭くなっているように思うとのこと。
「今日、明日のことしか考えてない。昔は、特に男は、10年、20年先のことを考えて生きてましたよ。だけど今じゃ、目先のことばっかり。だからイライラするんでしょうねぇ。車に乗っても、皆、すぐにスマホですよ。外なんて、いっさい見ない。」
「本当に、東京の人は、こう言っちゃなんだけど、劣化していってるようで、何だか怖くもなっちゃう・・」
そして、
「毎日のようにお客さんで乗せますけどね、その点中国の人は、物凄いですよ。いろんな意味でね。あのパワーには勝てない。日本はいずれ、中国に乗っ取られるか、支配下に置かれるか・・。車に乗ってると、真剣にそんなことも感じますわ」
しみじみとそんなことも話していました。
タクシードライバーになって15年。
決して表面には出ない黒子の存在として、飾らない普段の人々の様子をじっと見てきた運転手さんの言葉は、妙に説得力があって胸に迫るものがありました。
東京という大都会の変化していくさまを、一番敏感に感じ取っているのは、タクシーの運転手さんのような気がします。
短い時間ではあったけれど、もちろん名前も覚えてはいませんが、日々感じていることをお話ししてくださってあり難かったです。
だんだん寒くなるけれど、今日も晩秋の街を走り回っておられると思います。
「どうぞお元気で!」そう声をかけ合ったことを覚えていたいと思います。
目を通していただきありがとうございました。
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