父からの1本の電話-振りまわされているのか、踊っているのか
もともと変形性膝関節症で歩行が不自由だった父。
3週間ほど前に転倒し、それ以来、車いすでの生活となりました。
幸いなことに骨折はなく、「痛くても頑張って歩いてください。そうでないと、歩けなくなりますよ」と医師に釘をさされ、処方された消炎鎮痛剤、胃薬とシップで何とかしのいできました。
痛みは、父曰く、「薄皮を剥ぐようにマシになってきた」とのこと。
来週から、そろそろ本腰を入れて歩行練習をする予定でいました。
姉からの1本の電話
金曜日の夕方6過ぎのこと。
姉から1本の電話がありました。
辺りを気にしている様子でくぐもった声。
「もしもし、あのね、お父さん、問題発生なんだわ」と。
この時点で、ドキッとする私。
姉によれば、今しがた、「足がものすごく痛い。もう、痛み止めがなくなったからこれからタクシーを呼んで病院に行く」という電話があったとのこと。
姉は間が悪く、美容院で白髪染めが始まったばかり。
「そんなこと言われたって、私は白髪染めベタベタですぐには動けんし、独りでタクシーに乗って行けるワケがないでしょう!この時間、どこの病院が空いてるっていうのよぉ!」
電話口の姉は、だんだんと気分が激しているもよう。
「もう、薬のことは、薬剤師さんにお願いして、毎月、指導管理料だか何だか払ってるのに、今、お父さんにとって一番大事な痛み止めが切れるってどういうこと!これは、クレームせんといかん!!」
「とにかく、今はどうしようもないから、ちょっと考えて折り返し電話するから待っててっていったんだけど、〇子からも、一度お父さんに電話して様子を聞いてみてくれる?」
そして、電話を切る間際に、「もう、金曜日の夕方なんて時に限って、何か起こるんだからっ!」と小さく叫んでその電話は切れました。
父との会話は要領を得ず
姉からの連絡を受け、とにかくすぐに父親に電話。
「お父さん、足が痛いんだって?」と尋ねると、
「そうなんだ。足が痛いんだよ」と。
「ズキズキするの?」
「ズキズキ?ズキズキって何だ?」
「いや、足がズキズキ痛むのかなって思って。ジーンとして熱っぽい感じ?」
「いや、熱はないぞー。咳も出ないし、大丈夫だ」
「じゃなくて、足。足のこと。足が腫れて熱っぽい感じ?」
「そうそう、問題は足なんだよ。歩けないんだよなー」
「やだ、お父さん、歩けないのも困るけど、今、痛いんでしょ?我慢できない感じ?」
「いや、そんなこと言ったって、我慢するしかないだろ・・。」
「ハァ??・・・何だかなぁ・・・」の父。全く要領を得ず。
「今、痛み止めの薬はないから、軟膏、わかる?軟膏、それを塗って、乾いたらシップを貼ってね。そうすれば、楽になるから」
そんなこんなの会話の途中に、部屋のチャイムの音。
姉からの電話で、ケアマネさんとスタッフの方が様子を見にきてくださったようでした。
もう、こっちがかなわんわぁ
折り返し姉に電話をして父の状態を報告。
痛みはあるものの、さほど差し迫った状況とも思えず、さして心配はいらないみたいだと伝えました。
姉が電話を受けた時には、どういうわけか、「すごく痛くてかなわん!今からタクシーで行く!」と大声で怒鳴っていたとのこと。
「ここ4日ばかりお父さんのところへ行ってないから、寂しくなっちゃたのかなぁ?」と姉。
そして、「もう、こっちがかなわんわぁ・・・」と大きな溜息。
結局、姉が美容院を出てからドラッグストアへ寄り、消炎鎮痛剤を買って父の元へ。
9時前に部屋に入ると、父親はすでに大鼾をかいていたとのこと。
翌朝、私が電話をかけ、「お父さん、昨日は足が痛くて大変だったね」というと、
「いやいや、大したことはない。心配しなさんな。足が痛いくらいで、ビクともせん。ハハハ」
ですって!
今回の1件で、姉は、白髪染めをつけた頭でオロオロし、私も電話口で溜息をつき、ケアマネジャーさんは帰ろうとする足を止められ、スタッフの方にもご心配をかけました。
「お父さんはね、周りを振り回すからやっかいなのよ」という姉の言葉が、まさに当を得ている感じ。
でも、考えて見れば、振り回されているのではなく、勝手に踊っているのかも知れないなぁと。
「お父さん、足が痛くても命を取られるようなことはないから大丈夫。軟膏とシップを貼って様子をみてね。薬は買って寝る前には届けますから」
そう、冷静に淡々と、そして粛々と伝えばいいのかも。
でも、それじゃぁ、ちょっとかわいそうな気もするし・・・、でも、メンドクサイ。
はぁ・・・。
それにしても、まだまだ道半ばでございます。
目を通していただきありがとうございました。
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