母親への贖罪、それが父親を突き動かしているのか
寝ても醒めても母親のことが頭を離れない父親。
胃瘻をつくることが決まった当初は、「母さんには、生きてもらわなきゃならんからなぁ」と言っていたにもかかわらず、翌日になると、「胃瘻をすると、帰って来られないだろ」と否定的なトーンに。
気持ちが揺らぐたびに、姉か私に電話をかけてくる父親。
10分おきに7回、8回と着信の入った携帯をみると、何とも気持ちが重たくなりました。
お父さん、それはDVだよ。犯罪だよ!
父親は、始終、母親を怒鳴りつける人でした。
「おまえは、何にも知らんなっ!」
「ごちゃごちゃ言うんじゃない!黙っとれ!」
「ばかもん!早くしろって言ってるだろう!」
などなど。
いつもは、「また始まった・・」と受け流している姉ですが、あまりのことに、「お父さん、どうしてそうやって怒鳴るの?それはDVだよ!立派な犯罪だよ!」と制したことがあったそうです。
父親は、「夫婦だからいいんだよ。もう、空気のようなもんなんだよ。」と応え、母親は、「それ以上言うな」と姉に目くばせ。
「あれは病気だね、完全に」
「もう、治らないね」
姉と私は、溜息をつきながら、そう話したものです。
その父親が、母親が倒れてからというもの・・・
そんな父親が、母親倒れてからというもの、もう、母親のことしか考えられなくなりました。
毎日でも面会に行きたい父。
姉が勤務で父親を連れて行けない日は、往復1万円のタクシー代を払って面会に行っています。杖を頼りに。
「母さんはどうだ?」「母さんがかわいそう」
口にするのは、ほぼ母親のことだけ。
後悔してるの?
それにしても、倒れてからこうなるのではなく、
もっと元気な時に、怒鳴ることなく母親に安寧な環境を作りだして欲しかった。
父親が、母親への思いを語るとき、「今になって・・・」と胸が少々ザワつきます。
「お父さん、怒鳴らずにいてやればよかった。そう後悔してるの?今、お母さんにやさしくしてるのは、罪滅ぼしなの?」
聞いてみたい気もしつつ、すっかり老け込んだ父親には酷な気がしてそこには触れずにいます。
きっと、最後まで聞けないし、聞かない気がしています。
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