還暦からの再起動

お料理レシピ、時々、遠距離介護や病気との付き合いなども。人生の下りを楽しむ還暦女子の日常です。

大切な人に貸してほしいと言われたら。大切な関係を守る人生の才覚

隠れ家のスペース

私たち夫婦。

当地に移住した当初は、仕事を縮小はしつつも、こちらに事務所も移し、細々と仕事も継続していました。

事務所としていたのは、自宅から車で10分程度の距離にあるマンションの一室。

事務所を閉鎖した今は、小さなお料理教室を開いたり、先生を招いて皆で絵を描いたり、お客様に泊まっていただいたり。

友人とおしゃべりしたり、夫婦でボーッと過ごす時間をもったり。

その場所は、そんな「隠れ家」のような存在になっています。

 

ここ、貸してもらうことはできへんやろか?

先日、お料理教室を開催したときのこと。

いつも参加してくれている友人から、ここを貸してほしいという申し出がありました。

その友人は、移住して右も左もわからない私たち夫婦を親身になってサポートしてくれ、私たちにとっては、年の離れた妹か娘のような存在。

悩みや心配事があれば打ち明けてくれ、これまでもいろいろなことを一緒に考えてきました。

夫も私も、この友人のことは心から信頼し、これから先も、彼女との関係を大切にしたいと考えています。

その友人が、少し言いにくそうに切り出したこと、それが、この場所を1日貸してほしいということだったのです。

 

自宅へ人を招くことができなくなった友人

その友人は、職場の仲間や子供の同級生のお母さんたちを自宅に招き、わいわいがやがやと過ごすことが大好きな人です。

夏はバーベキュー、冬はお鍋の会。

例年、仲間を呼んで夜遅くまで語り明かし、エネルギーを発散することで元気になる。

それが彼女のストレス発散の方法でした。

ところが、ある事情が重なり、友人を自宅に呼べなくなってしまいました。

そこで、我が家の隠れ家に白羽の矢が立ったというわけです。

「きちんと掃除してお返しするので・・・」と申し訳けなさそうに言う彼女が目の前にいました。

 

夫の反応は

自宅に戻って、友人の意向を伝えたところ、夫は私に、「どう思う?」と問いかけてきました。

私は、彼女ならば信頼できるし、困っているのならば助けてあげたいという率直な気持ちを伝えました。

夫は「そうか」と頷いた後、

「でも、この話しはやめておいたほうがいいな」ときっぱり。

それは、揺らぐことのない確信に満ちた言い方でした。

 

大切な人だからこそ、関係を悪くするようなリスクはとりたくないという夫

夫は、その理由として、

以前、自分の大切なものを信頼していた人に貸し、その後トラブルが生じ、結局、その人との関係が疎遠になり、ついには切れてしまった体験を話してくれました。

もう、何十年も前のことですが、ずっと夫の心のなかにあって、それは消え去ることのない出来事のようでした。

夫は、その時、大切な人だからこそ、トラブルのもとになるようなことは避けるべきだった。

そうしたら、その人との関係を失うことはなかったのにと猛烈に後悔したそうです。

 「お金もモノも、あげるつもりで貸すのならいいけれど、それだけの覚悟がないのなら貸すべきではないと、ボクは思ってる」

それが夫の出した結論でした。

 

翻って自分を考えてみる

夫の話しを聞き、わが身を振り返ってみました。

自分たちは使っていないスペースがあり、半ば、妹か娘のように感じている友人が、困っている。

それならば使ってもらって何が悪いのだろう。

喜んでもらえたら、それに越したことはない。

そう思っていました。

そして、「いいよ、使って、使って!」と物わかりの良い人でありたいという気持ちが、ありました。

断りにくいし、できれば良い顔をしたいという自分がそこには確かにいました。

 

人生の坂を下り始めた私たちに必要な才覚

このようなものの貸し借りをめぐるエピソードは、人生のいつの時期にもあることです。

どう対応するのかは、その人の置かれた環境や相手との関係性、状況によって異なるでしょう。

ただ、人生の坂を下り始めた私たちには、本当に大切にしたい関係を慈しみながら、末永く育てていくことが必要です。

人との関係においても、選択と集中

義理や社交辞令の関係性を超えたその奥にあるつながりを大切にしていきたい。

そのためには、時として慎重であること。

関係を守るために、あえて断ることも必要なこと。

「良い顔をしたい」という感情に流されないこと。

そうした人生の才覚が必要なことを、つくづく感じた出来事でした。

 

 

 

 

目を通していただきありがとうございました。

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