還暦からの再起動

お料理レシピ、時々、遠距離介護や病気との付き合いなども。人生の下りを楽しむ還暦女子の日常です。

生きられる時間は短いのに一日が長いという友:絵を始めたわけ

もう、1年前のことです。

親しかった友人が、緩和ケア病棟に入院したと聞いて、お見舞いに行ってきました。

入院前は、痛みと呼吸苦で生きているのも大儀だったと話していましたが、

実際に会った友人は、思ったよりも顔色も良く、元気そうに、見えました。

 

今、一番辛いことはなに?

緩和治療が奏効し、ずいぶん楽になったと笑顔の友人。

食事も、まずます食べられるようになって、近く退院できるかも知れないと話していました。

すっかり安心した私。

「今、一番辛いことはなに?」と尋ねてみました。

「う・・ん」と考え込んだ後、

「(残された時間は)あと月単位だと言われていて・・。生きられる時間は短いのに、1日が長くて、それが一番辛いかな」と友人は答えました。

そして、「今日は、貴女が来てくれて、とっても嬉しいの」と。

 

もう、こんな時間?といって過ごしたい

その時はピンと来なかった私。

その後、何度か面会に行き、帰り際にたびたび彼女の口から出るのは、

「もう、こんな時間?今日は時間が経つのが早くてうれしいわ」という言葉。

限りある時間ならば、「あっと言う間」に過ぎるほど、充実した日々を送りたい。

「まだこんな時間なんだ」と時間を持て余すようなことはしたくない。

そんな彼女の気持ちがだんだんとわかってきました。

 

ベッドで続けられる趣味を

そしてある時友人は、「病気になっても、ベッドで続けられる趣味を持ちなさいよ」と勧めてくれました。

辛い時に、自分を救ってくれるのは、「夢中になれるなにか」だと。

夢中になれる何か、それも、病気になっても続けられること・・。

楽器や歌は音が出るし、手芸は道具が必要です。

でも絵ならば、紙と鉛筆があれば、何とかなる。

 

すべてを忘れて集中して過ごす感覚

そこで、半年前に絵を習い始めました。

絵を描くなんて、中学生の時以来。

ヘタクソを通り越して、自分でも自分が気の毒でなりません。

でも、やってみるとこれが楽しい!

まだ、鉛筆で物のカタチをとらえる段階。とても「絵」にはならない落書きです。

それでも、しばらく忘れていた「すべてを忘れて集中して過ごす」感覚を久しぶりに味わっています。

 

 

これから私も、病気とうまくつき合いながら過ごす人生となりそうです。

さまざまな身体と心の不調に、重苦しい時間を過ごすかも知れません。

そんな時でも、「絵を描くこと」を杖にして、「もうこんな時間?」といって過ごしたい。

友人は、私にかけがえのないものを遺してくれました。

 

  

 

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