生きられる時間は短いのに一日が長いという友:絵を始めたわけ
もう、1年前のことです。
親しかった友人が、緩和ケア病棟に入院したと聞いて、お見舞いに行ってきました。
入院前は、痛みと呼吸苦で生きているのも大儀だったと話していましたが、
実際に会った友人は、思ったよりも顔色も良く、元気そうに、見えました。
今、一番辛いことはなに?
緩和治療が奏効し、ずいぶん楽になったと笑顔の友人。
食事も、まずます食べられるようになって、近く退院できるかも知れないと話していました。
すっかり安心した私。
「今、一番辛いことはなに?」と尋ねてみました。
「う・・ん」と考え込んだ後、
「(残された時間は)あと月単位だと言われていて・・。生きられる時間は短いのに、1日が長くて、それが一番辛いかな」と友人は答えました。
そして、「今日は、貴女が来てくれて、とっても嬉しいの」と。
もう、こんな時間?といって過ごしたい
その時はピンと来なかった私。
その後、何度か面会に行き、帰り際にたびたび彼女の口から出るのは、
「もう、こんな時間?今日は時間が経つのが早くてうれしいわ」という言葉。
限りある時間ならば、「あっと言う間」に過ぎるほど、充実した日々を送りたい。
「まだこんな時間なんだ」と時間を持て余すようなことはしたくない。
そんな彼女の気持ちがだんだんとわかってきました。
ベッドで続けられる趣味を
そしてある時友人は、「病気になっても、ベッドで続けられる趣味を持ちなさいよ」と勧めてくれました。
辛い時に、自分を救ってくれるのは、「夢中になれるなにか」だと。
夢中になれる何か、それも、病気になっても続けられること・・。
楽器や歌は音が出るし、手芸は道具が必要です。
でも絵ならば、紙と鉛筆があれば、何とかなる。
すべてを忘れて集中して過ごす感覚
そこで、半年前に絵を習い始めました。
絵を描くなんて、中学生の時以来。
ヘタクソを通り越して、自分でも自分が気の毒でなりません。
でも、やってみるとこれが楽しい!
まだ、鉛筆で物のカタチをとらえる段階。とても「絵」にはならない落書きです。
それでも、しばらく忘れていた「すべてを忘れて集中して過ごす」感覚を久しぶりに味わっています。
これから私も、病気とうまくつき合いながら過ごす人生となりそうです。
さまざまな身体と心の不調に、重苦しい時間を過ごすかも知れません。
そんな時でも、「絵を描くこと」を杖にして、「もうこんな時間?」といって過ごしたい。
友人は、私にかけがえのないものを遺してくれました。
目を通していただきありがとうございました。
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