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還暦からの再起動

リタイア後に田舎暮らしを始めた還暦女子。それなりの「人生の旬」を綴ります。

スーパーマーケットのレジで学んだ老いの心得

夫には、スーパーでの買物の際の小さなこだわりがあります。

それは、他の人に迷惑をかけないように、スーパーのレジを最短の時間で通過すること。

小銭を出すのに時間を要しないよう、レジ打ちの途中で、まずお財布の中に小銭がいくらあるのか確認します。

1円玉が3枚しかないとわかっていると、合計の端数が4円ならば、ゴゾゴゾ1円玉を探さず、5円玉を出せばいい・・・。それが夫のやり方です。

 

まごつく年配の女性

ある日のこと。

週末のスーパーマーケットは、かなりの買い物客で混み合っていました。

お客さんの多くは、年配の方々。

その日も、私たちの前には、年配の女性が並んでいました。

お年の頃、70歳代後半といったところでしょうか。

黒いゆったりとしたパンツにグレーのカットソー、少々小太りで丸顔の、ごく普通の年配のご婦人といった印象の方でした。

レジの若い女性が次々に商品を機械に通し、年配の女性に合計金額を告げました。

女性は、お財布をバックから出して、表示された金額を見ながらお札を出し、そして端数の小銭を取りだそうとしますが、どういうわけだか、50円玉が出てこない。

1円玉を出しては、「あっ、50円じゃないわね」としまい、もう一度50円玉を出そうとすると、今度は100円玉。そんなやりとりが数回。

「あらら、ごめんなさい」と言ってるそばから、今度は掌から小銭がこぼれ、レジのカウンター内に散らばってしまいました。

あわてて拾うスタッフ。恐縮する年配の女性。

私たち夫婦は、少しハラハラしながら、事の成り行きを見守っていました。

 

お待たせしましましたね。ごめんなさい。

それは、やっと会計を済ませ、カゴを持って立ち去る間際のことでした。

その年配の女性は、私たち夫婦の方に顔を向け、少しの笑みを含んだ柔らかな表情で、「お待たせしましたね。ごめんなさい」と声をかけてくださいました。

夫は、「いえいえ」と軽く応え、「運びましょう」とカゴを前方の台まで移動させ、その後、一言、二言、言葉を交わしたようでした。

「何て話したの?」

私の問いかけに、「いや、別に。でも、何となく、品格みたいなものを感じさせる人だったなぁ」と応えました。

 

周囲への気遣いを忘れぬ一言

 年を重ねれば、指先の感覚も鈍くなり、1円玉と50円玉を間違えたり、50円玉のつもりが100円玉だったり。

スーパーのレジが、まるで関所にように感じて緊張してしまう、きっとそんな日が、今は「こだわり」をもつ夫にも、そして私にもいつか訪れるような気がします。

お金を払う、これだけのことがうまくいかなくて、恥かしかったり落胆したり、焦ったり。

そんな時、一刻も早くこの場をやり過ごすことを考え、後ろに並んでいる人には全く気が回らない。

私ならば、気恥ずかしさもあって、アタフタとその場を去ってしまうような気がしています。

ところが、この年配の女性は、周囲への気遣いを忘れず、一言声をかけてくださった。

その心の余裕に、夫と同様、私も「人としての品格」のようなものを感じました。

 

これから私たち夫婦は、共に「老人」と呼ばれる年代に差し掛かっていきます。

お腹は出て背は丸くなり、顔の筋肉は垂れ、髪も薄くなり、時間はなくなる。

ただ、そうであっても人としての品格は磨き続けることはできるのではないか。

この日のスーパーマーケットでの出来事は、私たちの大切な思い出になっています。

 

 

 

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