還暦女子。唐突にパンプスを履くことを決意する
突然ですが、先日、7センチヒールのパンプスを2足買いました。
最近、めっきりと物欲が後退し、欲しいものなどないと思っていたハズなのに、突然、明るい色のパンプスが欲しくなりました。
本当に唐突に。
パンプスと言えば、リタイア後は、せいぜい履いても年に3~4回。それも、冠婚葬祭用の黒ばかり。
50代の半ばまでは、毎日朝から晩まで履いていたパンプスも、だんだんしんどくなり、最も近いコンビニまでの距離は何と10キロという堂々たる田舎に移住した後は、すっかりご無沙汰でした。
農業と漁業を主産業とする当地のご婦人の靴事情は、何といってもスニーカーが全盛。その他、若い女性は、ぺったんこのバレーシューズ、年配の方は、皆さんコンフォートシューズ。パンプスを履いた方は、セレモニーホール付近のみでおみかけするという感じ。
「誰も履いていない」ことで、何となく自分だけが履いていては、田舎では妙に目だって場にそぐわない・・そんなふうにも思っていました。
ところが、本当に唐突にパンプスをごく日常的に履くことを決意した私。
なぜ今、パンプスなのか。(大袈裟)
それは、介護に直面するようになっことが影響していると思います。
表情はどこかうつろ。すぐに、コックリ、コックリと眠りの世界に吸い込まれてしまう我が母。
母をみていると、母が自分の年齢だったころは、どう過ごしていたのだろうと思うことがよくあります。
24年前、母親が還暦を迎えていた頃は、テニスに夢中。連日テニスコート通いをしていました。ウエアのコーディネートも楽しんでいたような。
オシャレが好きだった母は、その頃はまだ背筋を伸ばしてパンプスを履き、出かけていた記憶があります。
ところが、70歳でテニスをやめた後に、老いが急速にやってきました。
今思えば、ゆっくりと認知症の段階を進んでいたように思います。
今となっては、パンプスどころか、リハビリ用のシューズを履くのも大騒動。
母をみていると、自分の足で歩ける時間は限られているし、ましてパンプスを履ける期間はそう長くはないことをしみじみと思い知らされます。
そして、両親に限らず、高齢者住宅や有料老人ホームに入所しておられる先輩諸氏と接していると、正直なところ、気分が下向きになってしまう自分を感じています。
高齢者の方々の生きる姿に、励まされたり優しい気持ちになったりすることはもちろんありますが、一方で、やっぱりどこか切なく悲しい。
この気分を何とか払拭したい!
で、その手段として、少しオシャレをしてパンプスを履くことになったわけです。
春色の7センチのヒールでしっかり背筋を伸ばし、颯爽と歩きたい。
春の風を身体に感じて、還暦の春を満喫したい。
そんな止むに止まれぬ事情が、私を突き動かしたのでした(ここ大袈裟)。
それにしても、私は母から何を与えられ、今、何を与えてもらっているのだろうと考えることがあります。
過去に与えられたものは数々あれど、今の母から与えられているのは、何といっても、「今、この一瞬を楽しむ」ことの大切さ。
自分には、後ろを振り返ったりよそ見をしたり、下を向いていられるほどの時間は、もう残されてはいないことを実感しています。
人が何を履いていようとお構いなく、近所のスーパーにもジムにも、習い事にもパンプスで出かけています。
でも、心配は全く的中せず!
自分が思うほど、誰も人の靴など見ていない!
このまま、80歳になっても90歳になっても、気分を上げてくれるパンプスで背筋を伸ばして颯爽と歩きたい。
今、そんなことを思っています。
目を通していただきありがとうございました。
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