還暦からの再起動

お料理レシピ、時々、遠距離介護や病気との付き合いなども。人生の下りを楽しむ還暦女子の日常です。

病棟のエレベーターの扉が閉まった夜ー上手に生きられなかった子育ての頃

このブログを始めてから、

子育て中のパパやママの日常を垣間見る機会が増えました。

私が子育てしていたのは、もう30年も前のこと。

昭和の最後から平成の始めにかけてです。

自分の子育てを思い返すこともしばしば。

そんなタイムスリップの瞬間に、ふと、ある光景が甦ってきました。

 

息子の病気

それは息子がまだ1歳のお誕生を過ぎて間もないころだったと記憶しています。

息子はアレルギー体質で、喘息の傾向がありました。

風邪をひくと、決まってヒューヒュー、ゼイゼイ。

昼間は熱が下がっていても、

特に夜になると咳こみ、熱も高くなって眠りも浅く、一晩中ぐずって眠らないことも。

当時、フルタイムで勤めていた私は、日中は子供を義父母に預け、夜間はこまごまとした家事と育児でてんてこまい。

夫は超多忙で、子どもの寝静まった深夜に帰宅する毎日でした。

 

ついに入院

そんななか、2~3日、高熱が続き、ほとんど眠らない夜を過ごした息子が、ついに入院することになりました。

当時、1歳児の入院には母親の付き添いが必須。

幾晩もほとんど眠れていなかった私は、幼児用の狭い柵付きのベッドに息子と二人、倒れ込んでしまいました。

点滴の管理をまだ医療機器ではなく人に頼っていた時代のこと。

付き添う母親は、子どもの点滴が詰まったりしないよう、見張っていなければならなといのに、私は襲ってくる睡魔には勝てず、アラームが鳴っても気づきもせずに居眠りばかり。

「お母さん、寝てばかりいないで、ちゃんと見ていてください!」と看護師さんに叱られました。

 

仕事が頭から離れない

そんな当時の私。

いつも頭から離れないことがありました。

それは、年度末を迎えて締め切りの迫った報告書の作成。

当時、一人職種として働いていた私は、自分が期日までに仕上げなければ、業務に穴をあけてしまうと思いこんでいました。

今のように、パソコンが普及していない時代の頃の話しです。

入院の荷物のなかに、風呂敷に包んだ大量の資料と電卓をしのばせ、息子が眠ったスキになんとか仕事をやってしまいたい。

いつもその機会を狙っていました。

 

エレベーターからもれる光

そして、入院して数日後の深夜のことです。

もう、明日までに仕上げなければどうしようもないというギリギリのとき、息子が寝息立てて眠っているのを見届け、そっと添い寝していたベッドから抜け出しました。

どこか仕事のできる場所はないかと風呂敷片手に病棟内をウロウロ。

そして、やっと見つけました。

病棟のエレベーターの扉が開いていて、そこから鈍い光が。

「あっ!ここならできる!」と思った私は、看護師さんに見つかってしまうのではないかとビクビクしながら、エレベーターからもれる光を頼りに、片隅のベンチに腰をかけ資料を広げました。

そして、「さぁ!」と、とりかかろうとした瞬間、突然、目の前が真っ暗に。

誰かが階下でエレベーターのボタンを押したのでしょう。

鈍い音とともにエレベーターの扉が締まり、エレベーターは階下に吸いこまれていきました。

 

エレベーターが動くことなど、考えずともわかるはずなのに、自分の浅はかさに笑いが込み上げるとともに、不覚にも涙が。

すぐに病室に戻ると、幸い、息子は寝息を立てて眠っていました。

子供が病気の時くらい、なぜ100%母親でいようとしてやれないのか、「良い母親」でいてやれない申し訳なさに胸が痛んだのを覚えています。

あれから30年。

母親が勝手に流した涙や胸の痛みなど知らない息子は、そろそろ立派な「おっさん」になりつつあります。

 

上手に生きる知恵を持ちあわせていなかった自分

こうして考えてみると、当時私は、ただただ必死なだけで、上手に生きる知恵を持ちあわせてはいませんでした。

もっと、周囲に助けを求めるべきだったのに、それができない私でした。

「母親としてしっかりしなければいけない」

「良い妻でなければならない」

「仕事に穴を開けてはいけない。迷惑はかけられない」

「弱音を吐いてはいけない」

「周囲に波風を立ててはいけない」

そんな気持ちが強く、知らず知らずのうちに背負いこみ、抱え込んでいました。

きっと、周りの人は、

「もっと頼ってくれればいいのに」と、きっと私の扱いに困ってもいたのではないかと思います。

これ以降、息子に弟が生まれました。

それでも、私のこの傾向は変わりませんでした。

 

今、ブログを通して、子育て真っ最中のパパやママが、

自分のなかにある感情に耳を澄ませ、自分の気持ちを大切にしておられる姿を拝見して、本当に心強く、応援したい気持ちでいっぱいになります。

そして、上手に生きられなかったあの当時を振り返り、文章に綴ることで、自分の生きて来た道のりが多少は整理できるような気もしています。

ブログという手段を通じていただいたご縁のありがたさを痛感しています。

 

 

 

 

目を通していただきありがとうございました。

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