還暦からの再起動

お料理レシピ、時々、遠距離介護や病気との付き合いなども。人生の下りを楽しむ還暦女子の日常です。

ケアマネさんに学ぶ老父の怒りへの対応

父は、若いころから些細なことで怒りを爆発させる人でした。

それは、時と場所を選ばず。

 

デパートの食堂で

私が中学生の頃、年末にデパートの食堂で家族そろって食事をすることになりました。

年末の大売り出しの最中で、食堂はごった返していました。

少し待った後、運よくテーブルに案内されましたが、いくら待っても注文した料理が運ばれてはきません。

短気な父親は、待つことが苦手。

「これはマズイ」。私は、これから怒り得る危険を察知しながらハラハラドキドキ。

そしてやはり事件は起こりました。

私たちより後にテーブルに着いた隣のお客様のお料理が運ばれてきたとき、父親がスクッと立ち上がり、ウエイトレスさんに向かい、食堂中に響き渡るような大声で怒鳴り始めました。

「おい!こっちが先だろ!何やってるんだ、バカモン!!この忙しい年の暮れに、ボンヤリ待ってられないんだよっ!順番があるだろ、順番がっ!そんなこともわからんのかっ!」

驚いて、凍りつくウエイトレスさん。

そして、食堂が一瞬静まり返り・・・。

そして次の瞬間、父親は、「もう、行くぞ!」と私たちに合図。

スタスタ出口とへと向かい、母と姉、私は父の後に従いました。

食堂にいたお客さんの視線を一斉に浴びながら。

思春期だった私は、恥ずかしくて恥ずかしくて、この世から消え去りたいような気持ちになったのを覚えています。

 

老父の怒りは今も健在

先日、父の住む高齢者マンションを訪ねた時のことです。

「ピンポ~ン」とチャイムが鳴り、書類を抱えたケアマネさんとお掃除のためヘルパーさんが入ってこられました。

ヘルパーさんの顔を見た父の顔が明らかに曇り、「今日は掃除はいいですから。また今度にしてもらえますか」と。

自分が自室で過ごしているときに、よその人が自分の空間に入ってくることを嫌う父。

特にガーガーという掃除機の音が苦手です。

困ったヘルパーさんが何か言いかけた時、父が怒鳴り始めました。

「人の家に、ズカズカ入り込んで、ガーガーうるさいんだよ!掃除なんていいんだって、言ってるだろう。やめてくれ~!」

88歳の父。あの頃と変わらぬ勢いでした。

 

ケアマネさんの対応

ケアマネさんは、そんな近寄り難い形相の父親の脇にしゃがみこみ、視線を下から見上げるようにして父に話し始めました。

「そうよね、〇〇さんは、これが嫌いだもんね。うるさくて嫌だって言ってたもんね。」

少し落ち着いて、微かに頷く父。

「でもね、〇〇さん。これがねぇ、私たちの仕事なんだわ。ちょっと煩いけど、パッと手早く済ますから、ちょっと我慢してもらえる?」

そんな問いかけに、父は、

「仕事ならしょうがないな・・」とブツブツ言いながら、了承しました。

 

 

「ご迷惑をおかけしてすみません。短気なもので」

そう声をかけると、ケアマネさんは、

「いえいえ、私たちは慣れてますから。いろんな方がいらっしゃるから。お年寄りは、それぞれに個性豊か。それがこの仕事の面白いところです」と笑顔。

未だに父の怒鳴り声に慣れない私。

ケアマネさんに教えられた1日でした。

 

 

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