還暦からの再起動

お料理レシピ、時々、遠距離介護や病気との付き合いなども。人生の下りを楽しむ還暦女子の日常です。

別荘地の憂鬱:変えられないものを受け入れる

先日、私たち夫婦は、しばらくぶりに友人ご夫婦の別荘におじゃましてきました。

そのご夫婦は、ご主人の定年退職を機に別荘を建て、週末田舎暮らしをエンジョイされていました。

別荘は、山と海の両方を見渡せる丘の中腹にあり、夕日が対岸に沈むときの美しさといったら!

ご夫婦の別荘が憧れでもありました。

 

周囲の変化にびっくり!

私たちを出迎えてくれたご夫婦。開口一番、奥様が「びっくりしたでしょ」と。

曖昧に頷く夫と私。

実は、ご夫婦の別荘の前の土地に、立派な二階立ての家が建っており、ご自慢の眺望が大きく遮られていました。

パノラマビューだった眺望の半分は前の家の外壁で見えなくなっており、庭の日当たりも、その半分は陰に。

奥様が丹精して育てたバラも、半分ほどに減って、お庭が淋しくなったように感じました。

 

まさか家の前に

何と声をかけていいのか戸惑っていると、奥様が、「まさか家の前に、こんな立派な二階立てが建つとは思ってもみなかったのよ、馬鹿でしょ」と自嘲気味に話し始めました。

そもそもご夫婦がこの土地を購入したのは6年前。お二人は、土地を手に入れ、すぐに別荘を建てました。そして前の土地は、ご夫婦がこの土地を購入してから半年後に売却済みとなったとのこと。

「前の土地が売れてるんだから、家が建つことだって当然あるわけなんだけど、売れてからずっとそのままだったから、こりゃ、家は建たないんじゃないかって、勝手に思いこんでたのよ」と奥様。

「前の家の工事が始まっても、しばらくは、平屋かもしれないなんて思ってて、笑っちゃうよなぁ」とご主人。

それからお二人は、今回の「事件」について、あれこれと話してくださいました。

 

ショックと恨みと夫婦喧嘩

最初はね、そりゃもうショックで、見るのもイヤになって、半年もほったらかし。

前のお家の施主さんも、もう少しこちらのことを考えて建ててくれてもいいんじゃないかって、恨みがましく思ったり。

この土地を買ったときに、前の土地は空いてたわけだから、眺望を確保するために、借金してでも買っておけば良かったのに。

だいたい貴方は、そういうところの判断が甘いって夫婦喧嘩になったり。

そういう気持ちになって当然だと、ただ頷く私たち。

 

都合良く考えることにしたのよ

しばらくそんな話が続いた後で、夫が問いかけました。

「それで、どうやって気持ちを立て直したんですか?そりゃ、大変なことだと思うけど」

「まぁ、時間かな。もう、前の家は建っちゃったんだから、今さらどうしようもないし」とご主人。

「最初は、正直、腹が立って仕方なかったんだけど、外に散歩に出れば、家からは見えなくなった海も夕日も見られるし」と奥様。

そして、夏の厳しい西日と冬の冷たい海風が、前の家によって遮られ、過ごしやすくなったこともあり、

庭の日当たりも悪くはなったけれど、広げすぎていたガーデニングを整理するきっかけにもなったと話しておられました。

そして、「前の家が衝立のようにこの家を守ってくれていると、都合良く考えることにしたのよ」と笑いながらお二人。

「まぁ、この家が建ったときも、後ろの家の人は面白くなかっただろうし、自分たちも誰かのちょっとした不幸を土台にしていたわけで。6年も楽しませてもらったと考えれば、逆にありがたいですよ」というご主人の言葉が、深く心に沁みわたりました。

 

穏やかで優しい気持に

それにしても、今のような心境に到達するまでに、どれほどの胸のザワつきを体験されたことでしょう。

時間を味方につけ、変えられない現実を受け入れ、見方を変えることで、体勢を立て直していく。

言葉ではわかっていても、現実に直面するとなると、なかなかできないことのように思います。

「他人のちょっとした不幸を土台に自分たちの幸せがある」

ついつい、自分の利益ばかりに目が行きがちですが、自分たちの立ち位置を、大きな枠組みで考えてみると気持ちにゆとりがもて、自分自身も楽になる。

それもこのご夫婦から教えていただきました。

「立派なご夫婦だね」

以前のような眺望は望めなかったけれど、夫も私も、なぜか穏やかで優しい気持ちになった別荘滞在でした。

 

 

目を通していただきありがとうございました。

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